ヒアシンス(風信子)文庫に本の出前の注文があったのは2015年の10月頃だっただろうか。文庫に本の出前の注文が舞いこむとは思いもよらないことだった。最初に出前の注文をしてくれたのは、文庫から車で10数分で、海と山が間近な佐波という集落の中にある`産の森学舎`というフリースクールだ。かつては牛舎として使われ、その後は納屋だったスペースの2階をスタッフが自ら改修して、2015年4月に開校、3名(小学1年生2人、4年生1人)で始まった小さな学校に4年後の今は22名が通っている。昨年4月からは児童2名の中学部も始まった。
スタッフは開校時の3人の子どもたちの両親である大松康、くみこ夫妻と西尾博之、昌子夫妻、それに隔週だが「おんがく」と「しぜん」の外部講師として河合拓司さん(ピアニスト/作曲家/即興演奏家)と野島智司さん(ネイチャーライター、興味深い「マイマイ計画」という活動を主宰)のお2人だ。《「くらし」と「あそび」と「まなび」をひとつながりで見つめ直す》ことから、体験・表現・対話などを大切にした、こどもも大人も成長する場作りを目指されている。
「しぜん」の授業を担当する野島智司さんの著書 |
1.からだ全体で学ぶ
2.じっくり丁寧に学ぶ
3.湧きあがってくるものを大切にする
4.あそび、くらす中で学ぶ
5.お互いに学び合う
小学部の1日の流れをみると、8時半から朝の会(「輪になって座り、話し合いや歌あそびをしながら大きな家族のような一日の始まり」)
9時から異年齢学級による2時間1コマの授業。『大人が自分の大好きな分野について、その面白さと「好き」を伝える時間。五感や身体性をともなうワークショップ形式の授業を主』とする。『子どもたちは、他者の「好き」の窓 を通じて世界と出会い、やがて自分自身の「好き」と出会います。』
(かつて吉田秀和さんが朝日新聞の「音楽展望」でだったか、「書くというのは自分(私)の好みを普遍化?すること」という言葉を思いだす。)
「授業の種類」を聞いて、驚いた。(こんなやり方があるのか)
・もじとかず
・美術
・音楽
・しぜん
・自学(「手づくり教材を使った自習時間」)
そうしてさらに驚いたのが、
11時から始まる、「食事の準備・食事」の時間。
ホームページの言葉をそのまま紹介したい。
「食事の準備は学びの宝庫。地元の無農薬農家から直接届く旬の野菜と伝統的な製法でつくられた調味料を使って、当番の子どもたちが昼食の支度をします。その日ある食材を見て献立を考えるところからスタート」
(子どもたちが決める当番の決め方にも驚かされた。)
13時頃から始まる「自由活動」の時間の過ごし方にも目を見張った。
「食後は、自分がどのように過ごすかを決められる時間。本を読む子、授業の続きをする子、ごっこ遊びをする子、お裁縫をする子、田んぼでボール遊びをする子・・・それぞれの時間を思い思いに過ごします。」
15時 「日記・帰りの時間」のあり方にも!!
「片付けを済ませたら、一日を振り返る日記をつけます。年度末などに読み返し、子どもたちが自分の成長を自分で見出す記録となります。」
15時30分 下校
《『好き』を通して 自分と向き合う 『好き』を使って 世界とつながる》を目指す
中学部についは、そのほんの一端の紹介にとどめる。
(興味をもたれた方は、下記の学舎のホームページをご覧ください。)
「中学部では《5つの基本コンセプト》に加えて、学びのサイクルをインプット(知識を得ること)ではなく、アウトプット(知識を使うこと)から始めるための《6つのアウトプット》を意識して、興味・関心のある事柄を自ら探求できる「自立した学び手」を目指します。」
よく考えられた《6つのアウトプット》の内容、それが単なるお題目ではなく、スタッフの一人ひとりが、自然体でしなやかに日々実践されていることに驚かされる。
1.問いを立てる
2.対話をする
3.デザインをする
4.探求する
5.協同する
6.表現する
食事の当番をふくめ、私自身子どもたちにまじって参加したいと思う時空がそこに広がっている。わたしが子どもだったら、なんとしても通いたい学校だ。
産の森学舎 http://www.sannomori.org/
さんのもり文庫のこと 風信子(ヒアシンス)文庫への本の出前の注文
産の森学舎では開校した年の11月、`さんのもり文庫`を開設、「ひとはこ本棚」(本棚10箱はスタッフの手製)に出展を呼びかけ、出展者のお気に入りの本を展示している。(現在では土、日を各2回の9日間)子どもたちの出展もある。風信子文庫にも声がかかり、1回目から毎回、本の出前をしている。
それぞれの「ひとはこ本棚」の上には、さんのもり文庫で用意されたA4の大きさの用紙がはってあり、そこには、
・・・・・・・・・・・・・さんのほんだな
・おしごと・じこしょうかい
・このほんをえらんだりゆう(テーマ、おきにいりのりゆう、どんなひとによんでほし
いか、など)
・いつもほんをよむのは・・・(じかん、ばしょ、きぶん、りょうなど)
の欄があり、出展者それぞれの言葉が書かれていて、私にとっては出前先で、こんな本があるんだ!!と出展された本を見る楽しさだけでなく、本と人との出会いの生き生きとしたあり方が伝わってくる手書きの文字と対面するうれしい時間でもある。とりわけ子どもたちが一生懸命に書いたと思われる言葉に幾度となく惹き込まれている。風信子文庫が(その出前で)私に授けてくれた思いもしなかった贈り物だ。
また、`さんのもり文庫`の本がおかれている場所は、私が何度も頭をぶつける太い梁が低く部屋の中央に走っている小さなスペースで、子どもたちが本と出会う場としてこの上ない空間になっている。その場に身をおくだけで懐かしい時間が紬だされているように思われる。
さんのもり文庫への出前の本 |
さんのもり文庫に出前 2018.2.2 |
出前の本 |
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