昨今の図書館事情 才津原哲弘
2007年3月に図書館を退職後、糸島に移り住んで13年になります。1972年(昭和47年)に千葉県内の市立図書館で図書館員となり、以後、福岡県や滋賀県の5つの図書館で働いてきました。退職後の13年の間に図書館の現場では、図書館のいのちともいえる資料費のすさまじい削減や、その活動を支える正規職員の削減と非正規職員の増加、そして行政の責務を放棄して、図書館の運営を民間に丸投げしたと思われる指定管理者制度の導入館の増加など、図書館を取りまく環境が一層の厳しさを増しているように思われます。
最近のことでは昨年の2019年6月7日、公民館、図書館、博物館などの公立社会教育施設の所管を自治体の判断によって教育委員会から首長部局に移すことを可能とする法律が施行されました。移管によって、観光・地域振興やまちづくりを首長部局で一体的に所管することで、「文化・観光振興や地域コミュニティの持続的発展等に資する」ためとしています。
作家の池澤夏樹氏が英文から訳した(新訳「日本の憲法」)では、「第二五条 人はみな
平等に教育を受ける権利がある。それぞれの能力に応じた教育を法律は容易する。」(『憲法なんて知らないよ』集英社)とあります。義務教育が無料であり、公立図書館が
無料であるのも、《すべての人に教育を》を、実現し保障するための2本の柱であり、憲法と法律「図書館法」によって定められています。「すべての人が」だれでも図書館を利用できるためには、住民の生活圏(中学校区)に図書館が必要です。2つの小学校区、人口2万人、半径800mに1つの分館をという3つの原則で図書館整備計画をたて、人口23万人で中央図書館と分館10館(その市では公立小20校、公立中8校、市民1人当り11.4点貸出)という滋賀ある一方、全国の中学校設置率(中学校と図書館数が同じ場合=100%)は34%(2015年度)です。
身近に図書館がないため教育を受ける権利を保障されていない人への計画的、長期的取り組みが、多くの図書館が直面している喫緊の課題であると考えますが、図書館を首長部局に移管する構想にはその問題意識はまったく見られません。「市民一人ひとり、そしてみんなの図書館」への道は、それを求めて学び行動する市民と行政の不断の努力にかかっていると思います。
《図書館フレンズいまり》のホ―ムぺ―ジより
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