2007年から糸島に移り住み、思いを同じくする人たちと「としょかんのたね・二丈」を始め、志摩地区の「みんなの図書館つくろう会」、二丈深江地区の「糸島くらしと図書館」の人たちと共に、糸島のより良い図書館づくりを目指して活動してきた。「糸島の図書館は今、どうなっているのか」、糸島図書館事情を発信し、市民と共に育つ糸島市の図書館を考えていきたい。糸島市の図書館のあり方と深く関わる、隣接する福岡市や県内外の図書館についても共に考えていきます。
2021年5月2日日曜日
5月は15歳の少女が書いた1冊の本の話から No.69
3月19日の金曜日、久しぶりに海辺の近く、山もすぐ近くにある佐波の集落に
産の森学舎(以下、「産の森」という)を訪ねた。折にふれて産の森には、風
信子(ヒアシンス)文庫から本の出前をしていたのだが、コロナのことが起き
て出前は長いことお休みになり、なかなか来れないでいた。
この日は筑肥線の線路の手前の空き地に車をとめて、歩いて行ったのだが、産
の森の学舎であり、大松さんのご自宅でもある家の前では何人もの子が遊んで
いたが、すぐに大松くみこさんと珠さんが現れて、清楚な佇まいの一冊の本を
手渡された。
少し厚みのある、白い表紙の真ん中にタイトル、左下に著者の名前。ーーーー
ーーー
ことばと歩く 大松珠
ーーーー
「珠」は「たまき」と読む。15歳の中学3年生の、おおまつ たまきさんが1年を
かけて書いた本だった。
ーーー
産の森のことは、「図書館の風」のNo.24で、その何とも面白く興味深い学びの様
子や昼ごはんを毎日、子どもたちが、献立を考え自分たちでつくっていることなど
を紹介している。
《「くらし」と「あそび」と「まなび」を見つめ直す》ことから、体験・表現・対話
などを大切にした、こどもも大人も成長する場づくりを目指してひらかれた。
ーーーーー
産の森学舎が始まったのは2015年、大松康・くみこ夫妻と西尾博之・晶子夫妻の4人
が先生で始めたフリースクールだ。開校時は小学部のみで、1年生2人、4年生1人の
3名だった。1年生の女子は西尾さんの、1年生の男子と4年生の女子が大松さんのこ
どもだ。
2018年には児童2名で中等部が始まり、2021年、今年の4月には小学部17人、中学部
9人になっている。3名の小学部からはじまり、7年目をむかえて、小学部、中学部で
26名のこどもたちが通っている。
ーーーーー
産の森の小学部に4年生ではいり3年を過ごし、中等部で3年間を「くらし、あそび、
まなんだ」大松珠さんが、なぜ、どのようにこの1冊の本を書いたのだろう。
さあ、表紙をめくろう。もくじの前のページで、さいしょにであうことば。
ーーーー
この本は、
「ことばってなんだろう?」
というひとつの問いから生まれました。
ーーーーー
(もくじにつづく、たまきさんのことばに耳をすまそう。)
はじめに「ことばってなんだろう?」
言葉について、より深く考えたい。
さまざまな視点から、言葉の新たな面を見つけたい。
そう思い、私は「言葉」をテーマにしたプロジェクトをはじめました。
ーーーー
私たちがプロジェクトと呼んでいるは、産の森学舎中等部の中心的な
活動となっている、探求学習のことです。問を立て、それについて様
々な手法で探求・追及・共有するというサイクルを繰り返します。
最初はスタッフの設定したテーマからはじめて、徐々により自由度の
高いテーマに行こうしていきます。最終学年になると大人からの指定
や縛りは一切なく、自分のやりたいことを突き詰めることができます。
【探求、追及なら、そうなのかと思うけど、さらに「共有」とは‼
そのサイクルをくりかえすとは‼「やりたいことを突き詰める」って
耳にあざやかな、いい言葉だな。】
ーーーーーー
私は昔から言葉が好きです。本を読んだり、人と話したり、言葉のこ
とを考えたりと、言葉に触れているうちに、自然と言葉に重きを置く
ようになりました。
これは私にとって産の森学舎で取り組む最後のプロジェクトとなるた
め、前にも増して好きなことに全力で打ち込みたいと思い、今回のプ
ロジェクトのテーマを選びました。
ーーーーー
テーマを決めてから、改めて言葉について考えました。そのと自分に
自分に投げかけたのが、この本の軸でもある「言葉ってなに?」とい
う問いです。
ーーーーー
その問いについて、私はふたつの仮設を立てました。第一に「言葉は
使う人によってまったく違ったものになる」のではないか、第二に
「その人の言葉はその人の人生に等しい」のではないか。というもの
です。
ーーー
この問いを考えるにあたってインタビュうーをしようと思った理由は、
大きく分けてふたつあります。
ひとつあ、第一の仮説を字異聞の五感で確かめたかったからです。他
の人からは「言葉」というものがどんな風に見えているのかを、自分
の体からその人の言葉で聞きたいと思いました。
そしてもうひとつは、・・・・・(略)・・・・・
人は成長の過程で、様々なところから言葉を吸収していると思います。
親や兄姉、周りの人、読んだ本、学んだこと、感じたこと。そう考え
ると、その人の言葉はその人の人生を表わしているとも言えるのでは
ないでしょうか。
そして生き方や大切なものが人それぞれであるように、言葉の役割や
意味は人によって全く違うし、そんな違いも全部含めて「言葉」なの
ではないかと思います。
ーーーーー
仮説を検証し、新たな言葉のおもしろさをはっけんすべく、お仕事も
価値観も様々な五名の方と言葉をめぐる旅をしてきました。
「あなたにとって言葉とはなんですか?」という問いから広がる、ま
さに5人五色の言葉たち。まずはじっくりご堪能ください。
《 ブログを書いているさなかですが、緊急のお報せ 》
アーサー・ビナード × 大松 珠 対談
日時 5月5日(水)
場所 産の森学舎
参加費 2,500円
定員 25名
連絡先 omtskmk.0502@gmail.com
以下、5人の方へのインタビュウ―が続き、さいごに「言葉と珠」と題して、
「質問者:たまき、回答者:珠」の章があり、11の質問とその回答が面白い。
その質問と回答ののいくつかを紹介したい。
「たまきの質問」
1.たまき:いつから言葉が好きなのですか?好きになったきっかけはありますか?
2.言葉に触れるというのは、具体的にどのようなことですか。?
3.おぜきさんのインタビューの中で「言葉へのこだわりが強い」という指摘があり
ましたが、自分でもそう感じますか?
4.「言葉は使う人によって全くちがうものになる」という仮説を検証するにあたって、
インタビュー以外の方法を考えたことはありますか?
5.どうやってこの五名に決めたのですか?
6.インタビューしてみてどうでしたか?
7.今回のプロジェクトで一番大変だったのは何ですか?
8.インタビューをしていて、印象に残ったことは何ですか?
9・お話を聞いてよかったと思ったことはなんですか?
10.今後、言葉にかんすることでやってみたいことはありますか?
11.この本を読んだ人に、何を感じてほしいですか?
そして「珠の回答」のいくつか。
6.(インタビューで一番大変だったこと)
どれもすごく大変だったけど、終ったときに一番達成感があったのは文字起こしの
作業です。最初は録音した音声を聞きながらパソコンに打ちこんでいたのですが、
私タイピングがあまりに遅いので早々と諦め、ノートに手で書き起こしました。
とても大変だったのですが、おもしろい発見もありました。インタビューをして、
録音したものを聞き返しながら文字起こしをして、確認して・・・。少なくとも
計4回はその人の言葉を聞く(あるいは書く、読む)ことになります。そしてその
度に、新しい気づきや感想が出てくるのです。
ーーーーー
11.言葉の奥深さです。普段無意識に使っているものだけど、意識して考えてみると
案外わからないものです。「言葉ってなんだろう」と思ってほしい。そして、
ちょっと勇気を出してその考えを誰かに話してみると、またおもしろい気づきが
ある課もしれません。
ーーーーーーー
5.(どうやってこの五名に聞こうと・・・)
それぞれ違います。
言葉ではない表現方法をお仕事にされている方が言葉というものをどういう風に
捉えてあるか気になりました。そこで、私もダンス経験があることもあって一度
お話してみたかった真澄さんと、写真を撮りつつMUKAでいりろな人と関わっている
香りさんにお願いしました。
宇佐美さんは、様々な知識やユニークな感性をお持ちのことから、お話を伺って
見たいと思いました。
一緒にいて不思議と安心できるおぜきさんとは暮らし方のお師匠である朝子さんは、
言うなれば「私の理想の人」枠です。
・・・・・
珠さんの五名の方の紹介を聞いただけでも、何ともそのインタビューに心ひかれます。
それぞれのインタビューの本文は「言葉と・・・さん」というタイトルではじまり、
さいしょに「たまきさん」のリードの短い言葉があり、インタビューというか、お2人
の対話がひろがっていく。そして、インタビューの終りのページに「話し手」一人ひ
とりの履歴が記されている。
・・・・・
五人の人はどんな人か、以下に珠さんの「リード」の文章と「履歴」を。---------------
1.「1人目 言葉と真澄さん」「ダンスとは世界共通言語だとロンドンで知りました。」
(Masumi Enndo 公式ホームページより)
「そう綴っていた真澄さん。
私自身もクラシックバレエやコンテンポラリーダンスの経験があり、お話を聞いていて
共感する部分が数多くありました。日本語という言語を使って話していたのに、まるで
体で会話したときのような、とても不思議で素敵な時間でした。」
・・・
遠藤 真澄
舞台演出/パフォーマー
・・・・・
インターナショナルダンス学院卒業後プロダンサーになる。2016年ロンドンに活動拠点を
本場のUKJAZZ DANCEの創始者たちに師事。2017年Levi-sのM”Circle”にメイン
ダンサーとして出演、エジンバラフリンジフェス、ロンドンボルツフェスなどの舞台芸術
出演、Lonndon Jazz Fesitival,Jazz Refest,など
のヨーロッパ屈指のJazz Festivalに招待される。UK JAZZ DANNCEをメインにメディア
から劇場、ワークショップまで幅広く活動。
・・・・・
現在帰国し、幼児から高齢者までダンス未経験者向けに海や森や図書館や学校、場所や人
をPerforminng Artsde繋げるひょうげんワークショップやセッションを開催。福岡県糸
島市を拠点に日本内外の芸術祭に出演、演出、映像制作を行う傍ら、ダンスを通して多様性
やあたたかい繋がりを地域の人と共有、一緒に感じられる活動を模索中。
・・・・・・・5人の中では、私はただ一人遠藤真澄さんを知っている。ある日、私が田植え
をしている最中に、龍国寺で座禅会に参加していた真澄さんは、若和尚の甘蔗健仁さんに聞い
てと、田植えの手伝いにやってこられたのだ。真澄さんのしなやかで粘り強い行動力には驚か
される。伊万里市民図書館での”ダンスと絵本”でのなんともすてきな時空の表現には
感動した。ブログのさいごに、そ一端を紹介したい。
【 よみがたりよみおどり WorkShop 伊万里市民図書館 】
https://www.youtube.com/watch?v=Nc̠rhzeGswE
この項つづく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2.「2人目 言葉と香織さん」
山本家に伺いました。小学生の頃はよくお邪魔して遊んでい
たことを思いだしました。
そのときは、香織さんは「友達のお母さん」でしたが、今こうして向かい合ってお話を聞い
ていることがとても新鮮に感じました。カメラマンとして」MUKAのスタッフとして、親として、
三つの視点から見えてくる。ーーーーーーーーーーー
・・・・・
山本香織
1976年福岡県生まれ。夫(絵が上手くて器用)と長男(読書欲、特技けん玉)、次男(サッカ
ー命)の4人家族。2003ねんごろからフリーランスのカメラマンとしてイベントやブライダル、
ポートレートなど撮影。2011年に糸島に移住後は写真と同時にフライヤー、パンフレット、
名刺など、もともと学んでいたデザインのお仕事もさせていただくようになる。いぜんから関
心があった「福祉と社会をデザインでつなげる仕事」がしたく、2017年から社会福祉法人香月
福祉会MUKAにて広報、デザイン担当として現在も働かせてもらっています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「3人目 言葉と宇佐美さん」ーーーーー
「風が強い日でした。私たちが宇佐美さんのお宅につくと、宇佐美さんと暖炉の薪がパチパチ
というはじける音が迎えてくれました。「言葉」というものについて丁寧に話してくださり、
またひとつ、言葉の奥深さを実感しました。インタビュウ―を依頼したとき、宇佐美さんが承諾
のお返事と一緒に私の名前(おおまつたまき)を使って短い詩を送ってくださいました。
「負いたるにーーー
追いたる光とーーー
稀なるーーー
積みし熱き想い達よーーー
達せよーーー
稀なる珠とならんーーー
きらめく天の星とならん」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇佐美洋一 Yoichi Usamiーーーーー・ビーズ・アーツ」主宰。ーーーーーーーーーーー
ドイツ・Stuttgart Eurythmeum 卒・国際オイリュトミー・ディプロマ取得。シュツッツガルトと
ハンブルグオイリュトミー舞台グループメンバー、ハンブルグ音楽ゼミナール講師、オイリュトミ
スト養成クラス・アルファ
主宰・講師、崇城大学芸術大学教授(熊本)、中村学園短期大学非常勤講師(福岡)、NHK文化
センター・福岡講師、九州・沖縄作曲家協会・日本こども学会会員、親子劇場創造団体「山の音楽
舎」作・作曲・演出ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作曲:オーケストラ曲から室内楽、ソロ曲、および劇場音楽、作曲古典四回ーーーーーーーー
オイリュトミー舞台:ヨーロッパ・日本で約四百公演ーーーーーーーーー
招待出演:アヴィニョン演劇フェスティバル、スペイン・グレック演劇祭、ハンブルグ現代音楽祭、
セイナヨキ現代音楽祭、バルトーク音楽週間、グバイドゥーリナ・ホソカワ音楽週間、世界舞踏祭
(赤坂)、シアター・オペラ「砂」、国際即興演繹「ミトラス」、演劇「ハムレット・マシーン」
アントロポゾフィー作曲家会議、国際オイリュトミー会議、オイリュトミー・ソロ・フェスティバル
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「4人目 言葉とおぜきさん」ーーーーーーーーー
「産の森にボランティアとしてきてくれたのが、おぜきさんと出会ったきっかけです。今ではお友
だちとして仲良くしてもらっています。この日も時々思い出話を挟みつつ、お茶をのみながらお話
しました。つい人に気を遣いすぎてしまう私に気を遣わせないように、いつも朗らかに包み込んで
くれるおぜきさん。紡ぎ出される言葉の隅々に、繊細でどこか不思議な「おぜきさんらしさ」満載
です。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おぜきさんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
糸島市在住。恵まれた環境にありながら、釣りはそんなに好きではなく、釣れた魚を食べる方が好き。
昔産の森の男子が海でしていたチャンバラを誰か映像化してくれないかなー、と本気で考えたことが
ある。そういえば、産の森の人が作るおやつ写真集もあればいいのになーと思っている。最近一番
笑った漫画はほのぼの。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「「5人目 言葉と朝子さん」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝子さんは、私とたくさんのものを出会わせてくれました。お着物の楽しさも。陰陽五行の奥深さも、
ごはんを美味しく食べてもらう喜びも、全部朝子さんが教えてくれました。実は時々、心の中でお師匠
さんと読んでいます。産の森の校舎の外、青空の下でお話を聞かせてもらいました。ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
寺口朝子ーーーーーーーーーーーーーーーー
産の森学舎で、『くらしと料理』の授業を担当。awauta brownrice主宰。大学卒業後、ドキュメンタ
リーのTVディレクターに。子どもが三歳の時にマクロビオティックスシェフ・西邨マユミと出会い、
自然に寄り添う食べ方を学ぶ。震災後東京から福岡へ移住し、家族で自然栽培の米作りを始める。
独学で麹作りを取得後、元寺田本家の麹文化研究家・南智征に師事。麹や玄米ポンせんなどお米に
まつわるプロダクトと発酵文化を広めている。大阪府出身。ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
さいごに
「言葉と珠」(質問者:たまき 回答者:珠)ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大松珠ーーーーーーーーーーーーーーーー
2005年9月25日生まれ。糸島の自然の中で育つ。「いいこと思いついた」が口ぐせの父、手作りおやつ
と仕事はいつもさくさくの母、歌が好きな2人の弟、最近歩きはじめた妹の6人家族。自他ともに認める
長女気質。少額1年生からクラシックバレエを習っていたが、中学1年生の終りに股関節を痛めてバレエ
の道を断念。本を読むこと、編み物をすること、学ぶこと、暮らすことが好き。得意料理は白和え。
持ち前の考えすぎる性格を最大限に活かし、言葉プロジェクトに没頭中。ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ここ項つづく。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿