2007年から糸島に移り住み、思いを同じくする人たちと「としょかんのたね・二丈」を始め、志摩地区の「みんなの図書館つくろう会」、二丈深江地区の「糸島くらしと図書館」の人たちと共に、糸島のより良い図書館づくりを目指して活動してきた。「糸島の図書館は今、どうなっているのか」、糸島図書館事情を発信し、市民と共に育つ糸島市の図書館を考えていきたい。糸島市の図書館のあり方と深く関わる、隣接する福岡市や県内外の図書館についても共に考えていきます。
2022年8月31日水曜日
「図書館は人々の共有財産です」〈岸本聡子杉並区長独占告白〉 No.93
ふだん利用している地域の図書館では週刊誌は2誌しかなく月刊誌も少ない。また私の生活圏には本屋さんがないため、
私は週1回は買い出しに出かけるお店(車で10分)や、その帰途たまに立ち寄るコンビニなどで雑誌に目を通している。
8月26日だったか、ある週刊誌を見ていて、思わず、「そうだ」と、その言葉に眼をとめていた。ーー
「図書館は共有財産です。」、 「図書館をどう扱うかは自治体のリトマス試験紙です。」
『サンデー毎日』9月4日号だった。116、117頁、2頁の誌面。大きな縦の見出しで、
「無作為で選んだ市民と対話集会続ける」、また、上段の横書きの中見出しには、
「岸本聡子杉並区長が独占告白」とある。
「公共政策のスペシャリスト」の肩書の右側に本人の写真、それに並んでもう一枚の写真が「公用車を使わず自転車通勤
する姿も話題に」との紹介記事とともに掲載されている。
ーーーーー
リードの文章は、こうだ。ーーーーーーー
「6月の東京都杉並区長選で現職の田中良氏を破り、初当選を果たした岸本聡子区長(48)。出馬表明からわずか2か月
で臨んだ選挙戦で勝利を飾った。国政シンクタンクの元研究員が、地方自治で実現したい政治とは何かを聞いた。」ーー
「図書館は人々の共有財産」、「図書館をどう扱うかは自治体のリトマス試験紙」という言葉は、次のような記事のなかで
でてくる。ーーーーーーー
「前職(欧州で約20年生活し、国際政策シンクタンクの研究員として各国の公共サービスの実態などを調査)の時は自身の
著書などで「コモン」の大切さを訴えてきた。コモンとは民主的に共有、管理されるべき社会の富だ。水道や鉄道、公園と
いった社会的インフラ、報道や教育や病院、自然などの地球全体の環境までをも含んだ意味を持つ。」
「コモンの価値を、区民の日常生活にまで落とし込むことが大事です。
たとえば図書館は人々の共有財産です。具体的な建築物として人が集まる場所であり、知る権利を保障する社会インフラの
役割を持つ。図書館をどう扱うかは自治体のリトマス試験紙です。「パブリック図書館の奇跡」「ニューヨーク公共図書館
エクス・リブリス」などの素晴らしい映画がありますが、そこではスタッフは本の貸し出しだけでなく、講演会やパソコン
講座、就職支援プログラムも行う。そういう知の拠点としての文化的、社会福祉的な役割も担うのです。自治体の多くはこ
れまで公的施設を削減するなどコスト重視でした。
でも区立施設や区の職員はコストではなく、杉並の財産なのです。
現在は、全国の自治体で運営の民営化が進むが、「コモン」を守るには公営であるべきだと言う。」
「大切なのは公共施設や公共サービスを杉並区の直営でやることです。民間委託だとお金がどう動き、使われたかがわかり
づらい。限られた予算だからこそ大切に、透明性の高いやり方が必要です。」ーーーーーーー
「水道や鉄道、公園といった社会的インフラ、報道や教育や病院、自然などの地球全体の環境」は、人々の共有財産で、
「民主的に共有、管理されるべき社会の富だ」ということ。区(市)立施設や区(市)の職員はコストではなく、杉並(
それぞれの市)の財産であるということ。図書館は市民の共有財産であること、まずこのことを心深く刻みたい。ーーー
117頁には「杉並区を民主主義の学校に」との見出しのもとに、岸本氏の政策集「さとこビジョン」が選挙中も区民の声を
反映する形でバージョンアップされてきたことが記されている。「そんな政策を通じて実現したいのが、『杉並区を民主主
義の」学校にする』ことだ」という。「海外で生活する中で、日本の政治に疑問を持つことも多かった。それがこの政策の
根幹になっている」と。「日本人はどうして”政治と生活は繋がりがない”と思いこまされているのかと、常々感じていま
した。主権者教育を意図的にせず、国民に主権者であるとの感覚を持たせない、意図的な力が働いているとしか思えない。
その意識がないから投票にもいかないのでしょう。でもそのほうが、為政者にとっては都合がいい。市民と政治の関係性に
おいて緊張関係を保つというその不断の努力を、権力側も市民側もしなければいけません。自分が選んだ議員を監視し続け
るというのは、市民にとって権利であると同時に責任です。これをやらないと社会も劣化するし、民主主義も劣化してしまう。日本は世界的に見てもジェンダー後進国ですし、不平等がはびこっていますが、その理由はこういったところにあるのです」ーー(記事は鳥海美奈子記者)ーーーーーーーーーーーー
「図書館をどう扱わうかは自治体のリトマス試験紙」〈その自治体・行政の民主化度をはかるものさし〉、私の住む糸島市では、図書館はどう扱われているか、その観点からあらためて見てみよう。
当該雑誌「サンデー毎日」9月4日号を早速買って帰ったのだが、関心ある方はぜひ、図書館などで見ていただきたい。ーー
追記1.新聞の書評に。ーーー
実は「サンデー毎日」9月4日号を手にした1週間前の8月26日(土)の毎日新聞朝刊の書評欄の「話題の本」で、和田静香という人の書評を読み、図書館でまずリクエストをしようと思っていた。『私がつかんだコモンと民主主義』岸本聡子)、本の表紙の写真が載っていて、タイトルの横には、「日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く」とあった。ーーー
「6月にわずか187票差で現職を破って東京・杉並区長となった岸本聡子さんによる、自身の半生を綴ったエッセイ『私がつかんだコモンと民主主義』(晶文社・1760円)を、夢中になって読んだ」が、書き出しだ。書評では図書館については何も
触れられてはいなかったが、まずはこの本を読んでみたいと思ったのだった。岸本さんのことは、それまでまったく知らず、
杉並区長に当選したばかりということも、本文で初めて知った。ーーー
追記2.そして8月25日、毎日新聞朝刊、1面下段の出版広告の右端の欄に『私がつかんだ・・・』の案内がでていた。
タイトルの上段に「8/20(土)毎日新聞の書評でさらに注目」とあり、タイトルの下には、重版決定 日本人女性移民 ヨーロッパのNGOで働く 杉並区初の女性区長による最新エッセイ! 世界とつながる 希望のポリティクスが
ここにあるーーーーーーーーこの案内で2版が出ることを知る。すでに知る人ぞ知るで、かなり話題になっているのだと。ーー
著者の他の本を調べてみると。
1.『安易な民営化のつけはどこに、先進国に広がる再公営化の動き』(イマジン出版 2018.12)ーーー
2.『再公営化という選択:世界の民営化の失敗から学ぶ』岸本聡子編 山本太郎 2019.5ーーーー
3.『日本の水道をどうする!?〈民営化か公共の再生か〉』内田聖子編著 2019.8ーーーーー
4.『水道、再び公営化!欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』(集英社新書 2020.3)ーーー
5.『ころな危機と未来の選択パンデミック・格差・気候危機への市民社会の提言』アジア太平洋資料センター編 コモンズ 2021.4ーーーーーーーーーーー
6.『最後の一滴まで/ヨーロッパの隠された水戦争」ヨルゴス・アヴゲロプロス監督。アジア太平洋資料センター 2019
ーーーーーーーーーーー
追記3.「図書館は人々の共有財産です」という言葉を見て、頭に浮かんだこと。2014年、糸島市に隣接する福岡市で起きたことを苦い思いで思いかえす。ーーーーーー
人口150万人を超える九州で最大の都市、福岡市で一番の繁華街は天神地区だ。その天神地区の西隣に大名地区がある。地下鉄
「天神駅」から歩いて10分足らず。大名地区は多数のセレクトショップや路面店、雑居ビルなどが所在する一方、かつてからの住宅地も残っていて、細く入り組んだ道路ともあいまって、天神地区とは異なった雰囲気を持つ。ーーーーー
その地区に1987年(明治6年)に創設された大名小学校があったが、開校140周年を経て2014年(平成26)、児童の減少による都心部の小中学校の再編により廃校となった。この地区でのかけがえのない公有地をどうするか、福岡市の動きは素早かったと今にして思う。廃校3年後には「旧大名小学校跡地活用プラン(平成29年3月策定9月改訂)」をふまえ、跡地活用の事業者公募を実施。30年3月、優先交渉権者を決定。当時、新聞記事やテレビのニュースなどで、その動きを知ったとき、私は福岡市民ではないけれど、「図書館砂漠・・・福岡市」と思うしかない福岡市で、市民の図書館に向けてのきっかけ、その論議の端緒ともなればとも思ったのだが。そこで聞こえてきた計画のあらましを知って驚いた。ーーーーーー
「地域活動や災害時の避難場所の役割【カモフラージュの定番の言葉、本音は後段に】国家戦略特区による規制緩和などを活用した新たな空間と雇用を生み出す福岡市の取り組み「天神ビッグバン」の西のゲートを担う場所となる。故安部氏、麻生某氏、現・福岡市長にまっすぐつながる在りよう。一人の市民として、その時思ったのは、「そこは市民みんなの土地、140年にわたり地域みんなの場であった土地」であるのにという思いだった。いったんそれを手放してしまうと、とりかえすことが難しい。お金のことだけではない、街中にあって地域の人たちがホッとする場所、次の世代の人たちにも大切な場となるような、「地域みんなの場所」となるような場づくり、それに向けての市民の関わりを大切にした地域づくりが見えない中で。ーーーーそうして眼前に立ち現われてきたのは。(これから宣伝がなされることだろう⁉)
敷地面積約10,000㎡、建築面積約5,600㎡、延床約90,000㎡。2022年12月竣工(ホテルは来春)をめざし、「オフィス・ホテル棟」(地上25階、高さ111m)「コミュニティ棟」(地上11階、高さ46m)はすでに外観を完成している。
【「オフィスホテル棟」オフィス、3階、5~16階。ーーー
ホテル17階~24 階5,6なされる00㎡、50㎡以上の客室162室(計画では)。
【「コミュニティ棟」1階公民館、老人いこいの家、多目的空間。2階テナント。3階テナント、保育所。4階オフィス。
7~11階レジデンス(19戸)
【その他】
土地の所有者とされる福岡市(ほんとうは市民から委託されたもの)のやり方、その手法をしっかり目に刻むためにも、この事業を担った「大名プロジェクト特定目的会社」5社の名前を記録しておこう。
・積水ハウス・西日本鉄道・西部ガス・西日本新聞社・福岡商事。
追記4. 2022年9月9日
『井上ひさし発掘エッセイ・セレクション/まるまる徹夜で読み通す]』(岩波書店 2022.7.14)を読んでいたら、著者が
書いた多数の推薦文の中から(この類のものが三百点弱確認)、百点を選んだ「推薦文百選」の章があった。その中に次の
一文があった。岸本さんの言葉とまっすぐ響きあう言葉。ーーーーーーーーーーーー
29 富塚三夫『国鉄再建への時刻表』
文化と文明は、人とモノの移動によって成り立つ。日本人の心を支え、移動をつかさどる大動脈を
国民が共有していることは大事である。国鉄は、公共の論理が尺度なのに、産業の論理だけ
で分割してしまうのは疑問だ。 (1982年10月 かんき出版/帯)
井上ひさしさんの声がきこえる。
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