2007年から糸島に移り住み、思いを同じくする人たちと「としょかんのたね・二丈」を始め、志摩地区の「みんなの図書館つくろう会」、二丈深江地区の「糸島くらしと図書館」の人たちと共に、糸島のより良い図書館づくりを目指して活動してきた。「糸島の図書館は今、どうなっているのか」、糸島図書館事情を発信し、市民と共に育つ糸島市の図書館を考えていきたい。糸島市の図書館のあり方と深く関わる、隣接する福岡市や県内外の図書館についても共に考えていきます。
2023年10月1日日曜日
いせひでこ & 柳田邦男の世界 No.118
風信子(ヒアシンス)文庫から2ヶ月に1回、本の出前を行っている市内前原のブックカフェ
「ノドカフェ」で、9月1日、本の入れ替えを行うとともに、出前の本の話をした。
今回のテーマは、「いせひでこ & 柳田邦男の世界」だ。
これは、伊勢英子さんの絵本『ルリユールおじさん』原画展(10月1日(日)~10月9日(月・祝)と
講演会『とくべつな一日、とくべつな路』(10月7日(土)14時~)が、伊万里市の黒川コミュニティ
センターで開催されるので、それに勝手に協賛して今回の出前の本のテーマとしたものだ。
伊勢英子さんの『ルリユールおじさん』の原画展がこれまで、九州・沖縄地区で開催されたのは、2回
だけとのこと。2008年沖縄、2011年福岡市で。私にとっては、伊勢さんの絵本のなかでは、『ルリユール
おじさんは』(2007年)は”わたしの一冊”ともいえる大好きな絵本だ。パリの街中のappartementにすむ
少女がこわれてしまった?大切な本をもって外にでかける。別棟のappartmenntの階上にすむおじさんも、朝の街角にでる。少女とおじさんがそれぞれに歩く街角の佇まいがとてもいい。手ぶらででかけたおじさんはバゲットをかかえている。おじさんは仕事場について仕事の準備、そのしごとばの前にやってきた少女は
中の様子にひきつけられてのぞきこむ。〈「おや、まだいる・・・」「はいってもいいの?」〉おじさんは”ルリユール”(製本を仕事とする)おじさんだった。
水彩の絵の力と簡潔なことばの力、少女とおじさんの会話、「ルリユール」の仕事をかたる絵とことば、さいごに表紙に新しくつけられた本の題、少女の名前、ソフィーがきざまれた金の文字の美しさ。おじさんのおとうさんも”ルリユール"だったという職人のしごと。
〈「ルリユール」ということばには「もう一度つなげる」という意味もあるんだよ。〉「ぼうず、あの木のようにおおきくなれ」といったおじさんのおとうさんのことば。詩のようなではなく、詩の語り、詩のものがたりと、心にしみこむ詩と響きあう絵。
『ルリユールおじさん』についで、『大きな木のような人』(2008年)、そして『あの路』(2009年)も
ほんとうによくも、このような絵本が生まれるもの! と思える伊勢さんから読者への至上の贈り物だ。
そういえば、『ルリユールおじさん』と同じ年に生まれた『にいさん』(200.8、偕成社)も心に刻まれる一冊だ。『にいさん』からは、『ふたりのゴッホ:ゴッホと賢治37年の心の軌跡』(200年、新潮社)が思いだされる。賢治がでてくると、伊勢さんの『よだかの星』、『水仙月の四日』【なんと、伊勢さんのテーマは「十種類の雪を描き分けること!、だという】。
伊勢さんは『旅する絵描き』(2007年、理論社)だ。
その地を訪ねる旅は、人に出会うための旅でもある。ゴッホや賢治、そして『カザルスへの旅』(1987・理論社、1997・中公文庫)。
出前の本の話の前に、図書館から借りた絵本など、この機会にまとめてゆっくりみることに。
よだかの星(1986)、ふたりでるすばんできるかな(1990)、あらあらあら(1990)、山のいのち(1990)、海のいのち(1992)、かさをささないシランさん(1991)、みんなでりょこうにいきました(1992)、水仙月の四日(1995)、気分はおすわりの日(1996/さし絵)、グレイが」まってるから(1993)、はちみつ(19/さし絵)、空のひきだし(1997)、雲のてんらん会(1998)、ぶう、雪女(2000)、はくちょう(2002)、むぎわらぼうし(2006)、『ルリユールおじさん』(2007)、にいさん(2008)、くるみわり人形(2008)、『大きな木のような人』(2009)、『あの路』(2009・山本けんぞう・文)、まつり(2010)、木のあかちゃん(2011)、「プロセスいせひでこ作品集」(2013)、チェロの木(2013)、かしの木の子もりうた(2014)、「わたしの木・こころの木」(2014)、「こぶしのなかの宇宙」(2016)、ねえ、しってる(2017)、「猫だもの ぼくとノラと絵描きのものがたり」(2017・かさいしんぺい文)、「見ない蝶をさがして」(2018)、『原田マハ アートの達人に会いにいく」(2023・新潮社ーーとても面白かった‼)
柳田邦男さんと私自身の出会いを手渡してくれたのは、乾千恵さんだ。2003年4月2日から27日まで、滋賀県
能登川町立図書館で、『月・人・石―乾千恵の書』展を開催した。『月・人・石―乾千恵の書の絵本』は、福音館書店の「こどものとも」562号として、2003年1月1日に刊行され、その年の12月の初めにハードカバーの本として発行された、千恵さんの十三の文字の書に谷川俊太郎さんの文と、写真家の川島敏生さんの写真で生まれた、日本で(世界でも?)初めての書の絵本だ。(私自身、この一冊の書の絵本からどんなに深い出会いの数々を授かってきたことだろう)
その『月・人・石』展に、柳田さんが神戸大震災のあと、毎年神戸での集いの日に参加されていて、その帰途、能登川に立ち寄られたのだ。
以後、柳田さんから直接、又著作を通して手渡されてきたもの、かけがえのない出会いははかりしれない。能登川ではもとより、三重県多気町立図書館(合併後は勢和図書館)、そして平戸市や伊万里市の図書館で。絵本専門士養成講座の場でも、そして、そして・・・。
出前の本の話の場に
9月1日のノドカフェでの出前の本の話の場に、思いもよらないお二人の参加があった。このたびの伊万里での伊勢英子さんの原画展と講演会の仕掛け人のお二人。
伊万里市黒川町から羽柴よしえさんは何とキーボードを抱えて、岩野聡子さんは(あとで、わかったことだが)『ルリユールおじさん』を何冊ももって。この日の参加者は私を含めて6人、最初に自己紹介のあと、お二人の語りよみが始まった。羽柴さんのキーボードからここちよい音がきこえるのなかで、岩野さんの読みかたりがはじまった。その声と伴奏の音に耳をかたむける4人の膝には、岩野さんから手渡された『ルリユールおじさん』があり、一人ひとり頁を開きながら、『ルリユールおじさん』の世界にはいっていく。
読みかたりの場で、その声な耳をすます人のだれもが、その本を手にし、それぞれページをめくりながら、
同じときをもつ、というのは私にとって初めてのことだった。
なんとも心みちるうれしい時間だった。一時間の時間が、お二人から手渡されたなんとも、うれしく愉しい気につつまれて、瞬く間にすぎたように思えた。
伊勢英子さんと柳田さんの本のこと
お二人の著作はそれぞれたくさんある、まだ読めていないものもたくさんある。
その中でもまず、新たに、あるいはもう一度読んでみようと思っているのは、お二人の著作だ。
さいごに、それを記しておきたい。
・『画集「死の医学」への日記』伊勢英子・絵 新潮社1996
※1994年4月から95年3月まで、毎日新聞全国版に週1回、連載。
・『見えないものを見る―絵描きの眼・作家の眼』1997
・『はじまりの記憶』(1999、講談社、2002・文庫)初出「本」1998.9∼1999.5)
🌸いせひでこ 絵本『ルリユールおじさん』原画展
・ 10月1日(日)~10月9日(月)
平日/10:00~17:00、
土・日・祝日/10:00~20:00
・場所:黒川コミュニティセンター〔伊万里市黒川町塩屋504ー1)☎0955-27-0001
米講演会はいっぱいとのこと。
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